米ナスダックは9日、上場株式の「本物のトークン化」に向けた新設計「エクイティ・トークン・デザイン」を発表した。米暗号資産(仮想通貨)取引所大手クラーケンの親会社ペイワードと提携し、議決権・配当を含む株主権をブロックチェーン上でそのまま保持できる仕組みを構築する。2027年上半期の稼働を見込んでいる。
これまで欧州を中心に普及してきたトークン化株式の多くは合成デリバティブ型だ。原株の価格変動には連動するものの、議決権行使や配当受け取りといった実質的な株主権を伴わない構造で、いわば「値動きだけを模した商品」にとどまっていた。ナスダックのモデルはこれと根本的に異なる。トークン1単位の移転が原株そのものの法的移転として扱われ、オンチェーンの記録が発行体の公式株主名簿に直接統合される。同社はこの仕組みを「完全法的同等性」と位置づけている。
ナスダック社長タル・コーエン氏は「トークン化のほとんどは発行体を念頭に置かずに進んできた。我々の取り組みは発行体に焦点を当てる」と語った。
参加は発行体の任意で、ナスダック非上場企業も含む全発行体が対象となる。議決権行使・配当支払い・コーポレートアクションをオンチェーンで自動化できるほか、決済は米証券決済機関DTCC(デポジトリー・トラスト・アンド・クリアリング・コーポレーション)を通じて処理される。この株式とブロックチェーンを双方向に接続する基盤を両社は「エクイティ変換ゲートウェイ」と呼んでいる。
ゲートウェイのインフラ基盤を担うのは、クラーケンが展開するトークン化株式サービス「xStocks」だ。ローンチから1年未満で累計取引量250億ドル(約3兆9,525億円)を達成し、うちオンチェーン決済額は40億ドル(約6,324億円)超、ユニーク保有者数は85,000人以上にのぼる。ペイワードはゲートウェイの一次決済レイヤーを担うほか、KYC・AMLコンプライアンス対応も提供する。
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xStocksは米国・英国の居住者には提供されず、対応する管轄地域のクライアントのみが利用できる。SECへのルール変更申請(2025年9月提出)の最終承認は現時点で未確定だ。
ウォール街における株式トークン化の動きはナスダックだけにとどまらない。ニューヨーク証券取引所(NYSE)も独自のトークン化証券取引プラットフォームの承認申請を予定しており、ブラックロックやJPモルガンのアセットマネジメント部門はトークン化マネー・マーケット・ファンドをすでに提供している。ナスダックが掲げる「株主権ごとオンチェーン」という設計思想は、こうした市場全体の流れの中でも一歩踏み込んだ構造的差別化といえる。
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