2026年1月14日、ブロックチェーンを活用した金融サービスを提供する米Figure Technology Solutions(以下、Figure)が、新たな株式取引プラットフォーム「On-Chain Public Equity Network(OPEN)」のローンチを発表しました。これは、既存の株式をトークン化するのではなく、ブロックチェーン上でネイティブに株式を発行・取引・管理する試みです。Figureは自身が最初の発行体となり、同社の株式をOPEN上で取引可能にする計画を明らかにしています。

※本記事の内容は、マネックスクリプトバンクが週次で配信している、FinTech・Web3の注目トピックスを解説するニュースレター「MCB FinTechカタログ通信」の抜粋です。マネックスクリプトバンクが運営する資料請求サイト「MCB FinTechカタログ」にて、過去の注目ニュース解説記事を公開していますので、ぜひご覧ください。

株式の「ネイティブ発行」とは何か

今回のニュースを理解する上で鍵となるのが、近年流通が始まっている「トークン化証券」と、Figureが提唱する「オンチェーン・ネイティブ株式」の違いです。

これまでの多くのトークン化プロジェクトは、DTCC(米国証券保管振替機関)のような中央集権的な保管機関に管理されている実際の株式を裏付けとし、それをブロックチェーン上で表現したトークンを発行する形式でした。この場合、ブロックチェーン上で所有権が移転しても、最終的な決済や名義書き換えは既存の金融インフラ(オフチェーン)で処理する必要があり、コストや決済時間の短縮には限界がありました。

対して、OPENが提供するのは、Figureが開発した独自のパブリックブロックチェーン「Provenance Blockchain」上に直接登記される株式です。DTCCを経由せず、ブロックチェーンそのものが正本となるため、仲介者を排除したコスト削減や、24時間365日の即時決済が可能になるとしています。

Figureは「Democratized Prime」という分散型プロトコルもあわせて提供するとしており、オンチェーンでの株式貸借についてもサポートする計画です。従来の金融市場では、機関投資家が空売りのために株式を借りる際、プライムブローカーと呼ばれる仲介業者が大きなスプレッド(手数料)を得るような構造となっていました。このプロトコルでは、株主と借手がスマートコントラクトを通じて直接マッチングされるため、貸株料の多くが仲介業者ではなく株主に還元される仕組みとなっています。

発表の詳細とエコシステムの拡大

FigureはすでにOPENを利用した自社株式発行の登録届出書を2025年11月に提出しており、OPEN上での最初の発行体となる予定です。また、プレスリリースではNASDAQに上場しているFigureの株式とOPEN上のFigureのオンチェーン株式は相互に交換可能であるとしています。これによって、流動性の高いNASDAQ市場と、即時決済や貸株収益が期待できるOPEN市場において、市場間の価格乖離を防ぐ裁定取引(アービトラージ)なども機能することが考えられます。

また、並行してエコシステムの構築も進んでいます。 プレスリリースによると、大手マーケットメイカーのJump Tradingが流動性提供の準備を進めており、デジタル資産カストディ大手のBitGoが適格カストディサービスを提供することで合意しているとしています。

DTCCによる「既存資産のデジタル化」との対比

Figureがインフラの刷新を掲げる中、既存金融の中核であるDTCCもまた、ブロックチェーン技術の取り込みを加速させています。

Figureの発表翌日となる1月15日、DTCCは保管中の約140万銘柄すべての証券をデジタル適格(トークン化可能)にすることを計画しているとする報道がありました。DTCCのアプローチは、既存の証券インフラを維持しながら、その上にデジタルのレイヤーを追加するものです。ユーザーは自身の保有証券をトークン化し、担保として活用したり、24時間取引を実現したりできますが、これはあくまでDTCCの管理下にある資産の形式を変えるものです。

市場規模の観点では、DTCCが抱える140万銘柄という圧倒的な資産規模に対し、Figureはゼロからの積み上げとなります。しかし、Figureのアプローチは、DTCCやカストディアンといった「中央集権的な管理者」を不要にする点で、構造的なコスト優位性を持っています。既存のレールの上で効率化を目指すDTCCと、レールそのものを敷き直そうとするFigureという、明確に異なる二つのアプローチが同時に進行している状況です。

考察

FigureのOPENは、トークン化証券が初めてブロックチェーンネイティブになる事例となる可能性があります。

特に注目すべきは、株式貸借(ストックレンディング)市場への影響です。これまで一部ブラックボックス化されていた貸株市場がオンチェーンで透明化され、収益が株主に直接還元されるようになれば、機関投資家や長期保有者が既存の証券口座からオンチェーン管理へ移行するインセンティブになり得ます。

NASDAQ上場株との相互交換性を確保した点は、流動性の分断という問題を解決する現実的な選択であるといえます。今後、Figure以外の企業がこのOPENプラットフォームを採用して株式を発行するのか、また規制当局がこの新しい市場構造をどのように監督していくのかといった点について、その動向が注目されます。


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