ロイターの報道によると、パキスタン政府はアメリカの暗号資産事業World Liberty Financial(ワールド・リバティ・ファイナンシャル、WLFI)の関連企業と越境決済に関する協力覚書(MoU)を締結した。契約の主体は、パキスタン財務省およびパキスタン中央銀行(SBP)と、WLFIと関係の深いアメリカ企業のSC Financial Technologies(SCファイナンシャル・テクノロジーズ)で、WLFI発行のドル連動ステーブルコイン「USD1」を規制下にあるパキスタンのデジタル決済枠組みに統合することを目指すとしている。

WLFIは、Donald Trump(ドナルド・トランプ)大統領の家族が関与する暗号資産(仮想通貨)事業として注目されており、USD1は2025年に発行されたドルペッグ型ステーブルコインだ。今回の合意は、パキスタンの中央銀行と連携してUSD1を規制されたデジタル決済フレームワークに統合する可能性を探るものとされ、国境を越えた送金や貿易決済の効率化を視野に入れている。

契約に至った背景には、パキスタンが現金依存の削減や送金コストの低減を目指し、国際的なデジタル決済ソリューションの模索を進めていることがある。送金はパキスタン経済にとって重要な外貨獲得源であり、特に国外からの労働者による送金が大きな割合を占めているため、既存の銀行ネットワークに依存しない新たな決済手段への関心が高まっていた。

また、パキスタンでは中央銀行デジタル通貨(CBDC)のパイロット実装を準備中であり、暗号資産に関する立法も最終段階にある。今回の覚書は、こうした制度整備と並行してデジタル資産活用の実験的な枠組みを具現化するものとみられる。WLFI側からはCEOであるZach Witkoff(ザック・ウィトコフ)氏がパキスタンを訪問し、政府関係者との対談を行ったことも報じられている。

ただし、現時点でUSD1がパキスタン国内で正式に決済通貨として採用されるか、また具体的な運用スケジュールについては明らかになっていない。専門家はこの覚書を「パキスタンが国際ステーブルコインを国家的な決済インフラと連動させる可能性を示す初の重要な一歩」と評しており、今後の展開が注目される。

|文・編集:井上俊彦
|画像:Shutterstock


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